生産者熱血ドキュメント 福島牛を、ブランド牛の最高峰に!ふくしま会津牛 第二話 あの日、福島で『ふくしま会津牛』に何が起こった!?

【掲載年月日:2019年5月17日】

「あの日、なぜか地下水が急に上がらなくなって、原因を調べようと牛舎に行ったんです。」

福島牛を、ブランド牛の最高峰に!第二話

その時突然、地面がグラグラグラッと揺れる。
牛たちが、右往左往しながら大声で鳴く。騒ぐ。
2011年3月11日。ここ湯浅ファームも震度5弱の地震に襲われた。

「牛舎や牛たちには大きな被害はありませんでした。でも、いちばん困ったのは牛たちのエサが届かなくなったことでした」

当時、湯浅ファームの牛の飼料は太平洋沿岸の工場から届けられていた。
しかしこの震災で発生した津波によってその工場が流されてしまったのだ。

「そんな大変な中でも、飼料会社の方々が頑張ってくださり、日本中からエサを探して手配してくれました。それでも集められたのは、一頭当たり1日1kgだけ。必要な量のたったの10分の1です。予定していた量は納入できないから、減らしてくれと言われる状況でした」

福島牛を、ブランド牛の最高峰に!第二話

牛たちは、当然、空腹の極限で我慢できない。
人が近づくとエサを求めて“ワーッ“と聞いたことのないような声で吠える。
血走った目つきで暴れる。
少量のエサを与えると同時に、湯浅さんたちでも恐ろしくなり、すぐさま逃げなければない状態だった。

福島牛を、ブランド牛の最高峰に!第二話

「牛たちには、ごめんって言うしかなかった。あとは稲わらを多めにくれてやるしか…」

しかし、その稲わらが、とんでもない不幸を呼び込む。

「その時はまだ、福島第一原子力発電所事故後に収穫された稲わらは使用制限されるって連絡はなかったんです。それで何も考えずに稲わらを牛たちにあげてしまった。そのことが後になって問題になってしまったんです」

福島牛を、ブランド牛の最高峰に!第二話

放射能汚染に関して情報は大混乱。
情報が届かず、牛たちにどのくらいの影響があるのか、避難は福島のどのエリアまで対象となるのか、ということも当初はわからなかった。
海沿いから100km以上離れた地とはいっても、もしかすると避難しなければいけないのか。
不安がよぎる。
単なる噂だと気持ちを立て直そうにも、先が全く見えない。
湯浅さんたちは重苦しい空気に包まれた。

「もし、避難してくれって言われたら、この牛たちは一体どうなる?殺処分になるのかな、だったら全部逃してしまおうかな、って」

福島牛を、ブランド牛の最高峰に!第二話

その後、会津周辺は避難の必要はなく大丈夫だと行政から連絡が来たものの、福島県内の牛への影響がわかっていなかったため、一時出荷制限となってしまう。

大きな衝撃だった。
一時的にでも出荷できなければ、震災以降の厳しい資金繰りがますます苦しくなるだけでなく、出荷適齢期の牛が夏場の暑さと余震のストレスで体調を崩して、商品として品質が落ちるリスクが高かった。通常、福島牛は生後29~30ヶ月目をゴールに肥育するため、その時期にベストな状態になるように栄養バランスの管理を行っている。出荷できずに肥育適齢月数を越えてしまった牛たちがどうなるか、湯浅さんは経験したことがなかった。
出荷制限の間に、牛に与える稲わらについては、各地で国の指導のもと県による検査と保管管理が徹底され、放射能汚染されていた稲わらは処分された。しかし、牛肉の安全性への信頼の問題が残っていた。

どうしたら信頼を取り戻せるのか……
畜産農家みんなで集まって考え、当時、畜産団体の会長だった義父が再び先頭に立って意見を集約。
信頼回復のためには、徹底的に検査して危険が全くないということを証明していくしかない、という結論に至った。

畜産団体からの要望もふまえて、県は検査体制を整えた。
関係者の必死の取り組みで、出荷牛「全頭検査」・牛の生体の検査・エサや水などの飼養管理の検査の体制がつくられた。
検査方法が確立する前の当初の頃を、湯浅さんは振り返る。
「その時の尿検査がもう大変!真夏の7月、むんむんの牛舎の中で一日中、虫取り網みたいな袋を牛の股間に構える。そして、牛がオシッコをするのをひたすら待つわけ。でも、牛はなかなかしてくれず、いつするかもわからない。“あ、あっちのやつが出てる!”って慌てて行くと、もう終わっていたりして」

福島牛を、ブランド牛の最高峰に!第二話

今では笑い話にしているものの、当時は過酷なその作業が仕事の大半を占めるほど。
1日に10数頭ものオシッコ待ちを、たった2人、牛のそばにずっとしゃがんで行っていたという。

「そんな生活が続きました。そこまで徹底しないとダメだった。」
こうして生産者や関係者の努力が実を結び、2011年8月、一部を除いて出荷が再開された。

福島牛を、ブランド牛の最高峰に!第二話

これでやっと出荷できる!
しかし喜びよりも、とにかく牛が心配であった。
「出荷の見通しはたったものの、それまでに牛が体調を崩して死んでしまうのではないか、倒れてしまうのではないかと気が気ではなかったです。出荷まで行き着けるのか、管理しきれるのか、不安で夜中に牛舎に様子を見に行ったこともありました」

そしてようやく12月、12頭の牛の出荷を迎えた。
検査によって安全性も証明されて、自信を持って送り出せる。

「ここまでよく倒れずに出荷できたなって、奇跡だって、牛を褒めてやりたかったですよ」

福島牛を、ブランド牛の最高峰に!第二話

全てはここから再出発、と胸を張って出ていった卸売市場の競り場。
しかし、そこでは予想もつかない事態が待ち受けていた… (第3話に続く)

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株式会社 湯浅ファーム

取材協力

株式会社 湯浅ファーム
〒 969-3539 福島県喜多方市塩川町源太屋敷字前畑1572番地

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