プレスリリース 2010年

福島第二原子力発電所1号機の原子炉隔離時冷却系隔離弁における不具合の調査結果について

                             平成22年9月21日
                             東京電力株式会社

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<概要>
(事象の発生状況)
 ・平成22年6月2日、福島第二原子力発電所1号機において、非常時に原子炉内
  に水を入れる設備(以下、「当該設備」)の定例試験を実施していたところ、
  当該設備の弁に不具合があることを確認いたしました。
 ・本事象による外部への放射能の影響はありませんでした。
                     (平成22年6月2日お知らせ済み)
 ・プラント停止後、当該弁の点検・調査を実施した結果、当該弁体を上げ下げす
  る弁棒が折損しており、折損面には、繰り返し力がかかって割れた際に見られ
  る特徴的な波状の模様が見られました。
 ・当該弁の弁棒に、当該系統の定例試験時等に発生する振動の力が繰り返し加わ
  ったことにより、弁棒が折損し、弁の不具合が発生したものと推定いたしまし
  た。
 ・当該弁の弁棒を新品に取り替え、正常に動作することを確認し、起動するとと
  もに、当該設備の運転データを測定し、評価結果をとりまとめることといたし
  ました。
                     (平成22年6月9日お知らせ済み)
(調査結果)
 ・弁棒は、上部に駆動部を取り付けた状態で傾けながら、弁体取り付け・取り外
  しするようになっており、また作業場所も狭いことから、取り付け・取り外し
  の過程で弁棒の傾きがずれ、駆動部の重量が弁棒の一部に集中的に作用する可
  能性があることがわかりました。
 ・弁の分解・組み立ての際、取り付け・取り外し角度に十分留意していませんで
  した。
 ・弁棒に亀裂がある場合、プラント運転に伴う振動によって亀裂が進展し、弁棒
  が折損する可能性があることがわかりました。
(推定原因)
 ・当該弁の組み立て作業時に、弁棒の傾きがずれて駆動部の重量が弁棒へ作用し、
  微小な亀裂が発生しました。その後、プラント運転に伴う振動によって亀裂が
  進展し、弁棒が折損したものと推定いたしました。
(対策)
 ・当該弁の分解・組み立て作業時には、弁に角度計を取り付け、駆動部の重量が
  弁棒へ作用しないよう、角度管理を実施することとします。

詳細は以下のとおりです。
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1.事象の発生状況
  平成22年6月1日午後10時26分頃、定格熱出力一定運転中の福島第二原子力発
 電所1号機(沸騰水型、定格出力110万キロワット)において、原子炉隔離時冷
 却系*1(以下、当該系統)の定例試験(毎月1回)を実施していたところ、当
 該系統の蒸気管内側隔離弁*2(以下、当該弁)が全開にならないことを確認い
 たしました。
  その後、当該弁の電源等の調査を行った結果、当該弁に異常の可能性があるも
 のと判断し、当該系統が動作可能な状態にないことから、6月2日午前2時5分、
 保安規定*3で定める「運転上の制限」*4を満足していないと判断いたしまし
 た。
  また、運転上の制限を満足しない場合に「要求される措置」*5として、高圧
 炉心スプレイ系*6が正常に動作すること、および自動減圧系*7の窒素ガス供
 給圧力が正常であることを確認したことから、プラントの運転を継続することに
 問題がないことを確認いたしました。

  保安規定では、当該系統を10日以内に復旧することが求められておりますが、
 当該弁が原子炉格納容器内にあることから、プラントを停止して当該弁を点検す
 ることといたしました。
  本事象による外部への放射能の影響はありません。
                (平成22年6月2日お知らせ済み・公表区分I)

  その後、6月2日午前11時10分よりプラントの停止操作を開始し、同日午後7
 時58分にプラントを停止いたしました。
  また、プラント停止操作の過程において、原子炉隔離時冷却系に要求される原
 子炉圧力が保安規定に定める値(1.03メガパスカル)未満となったため、同日午
 後10時12分に「運転上の制限」を満足していない状態から復帰いたしました。

  プラント停止後、当該弁の点検・調査を実施した結果、当該弁体を上げ下げす
 る弁棒が折損しており、折損した弁棒の破面を観察した結果、何らかの力が繰り
 返し加わった時に見られる特徴的な波状の模様を確認いたしました。
  また、当該弁の弁棒に、当該系統の定例試験時等に発生する振動の力が繰り返
 し加わっていたことがわかりました。
  なお、前回実施した当該弁の分解点検(第17回定期検査時:平成16年9月〜平
 成17年6月)において、弁棒に異常は確認されませんでした。
 
  これらの点検・調査結果より、弁棒と弁体の接合部付近において振動による繰
 り返し応力が作用し、この繰り返し応力が疲労限度を超えたことにより弁棒に亀
 裂が入り、さらに弁棒内部へ亀裂が進展したことにより折損に至った結果、当該
 弁の弁体が脱落し、全開できなかったものと推定いたしました。

  当該弁の弁棒を新品に取り替え、新しい弁棒を組み込んだ弁で開閉試験を行い、
 正常に動作することを確認したことから、プラントを起動するとともに(平成22
 年6月10日起動)、設備信頼性の一層の向上の観点から、定期検査開始までの定
 例試験時に、原子炉隔離時冷却系のより詳細な運転データを測定し、その評価結
 果について最終報告としてとりまとめることといたしました。
                     (平成22年6月9日お知らせ済み)

2.調査結果
  当該弁について詳細な調査を実施した結果、以下のことがわかりました。
 ・当該弁の分解・組み立ては過去3回行っており、いずれの分解・組み立てにお
  いても、弁棒上部に駆動部を取り付けた状態で約38度に傾けながら、取り外し
  ・取り付けを行う必要があること、また、作業場所が狭いことから、取り付け
  の過程で弁棒の傾きがずれ、駆動部の重量が弁棒に作用する可能性があること。
 ・模擬試験の結果より、弁体に弁棒を取り付ける際、弁棒の傾きがずれることに
  よって、駆動部の重量が弁棒へ作用した場合、弁棒に微小な初期亀裂が発生す
  る可能性があること。また、駆動部の重量が作用する弁棒の位置が、今回折損
  した弁棒の破面観察で亀裂発生の起点と推定した位置とほぼ一致していること。
 ・弁の分解・組み立ての際、取り付け・取り外し角度に十分留意しながら施工管
  理することまで考慮していなかったこと。
 ・プラント運転に伴う振動を測定した結果から、弁棒にかかる応力を算出したと
  ころ、プラント運転中の振動だけでは初期亀裂は発生しないこと。また、当該
  弁棒に初期亀裂がある場合は、プラント運転中の振動により亀裂が進展し、弁
  棒が折損する可能性があること。

3.推定原因
  前回の分解点検後の当該弁の組み立て作業時に、駆動部を取り付けた弁棒の傾
 きがずれて過大な応力が発生したことにより、弁棒に微小な初期亀裂が発生し、
 その後、プラント運転中の振動により亀裂が進展し、弁棒が折損したものと推定
 いたしました。
  なお、弁棒に応力が作用し初期亀裂が発生した要因は、前回組み立て時の作用
 による可能性、あるいは前回を含む過去3回の分解・組み立て時の繰り返しの作
 用による可能性があるものと推定いたしました。

4.対策
  当該弁の分解・組立作業時には、弁に角度計を取り付け、駆動部の重量が弁棒
 に作用しないよう、弁棒の角度管理を実施することといたします。
  また、そのことを作業要領書に記載いたします。

                                  以 上

*1 原子炉隔離時冷却系
   何らかの原因により、通常の原子炉給水系が使用不可となり、原子炉水位が
  低下した場合等において、原子炉の蒸気を駆動源にしてポンプを回し、原子炉
  の水位確保および炉心の冷却を行う系統。なお、本系統は非常用炉心冷却系で
  はない。

*2 原子炉隔離時冷却系蒸気管内側隔離弁
   原子炉隔離時冷却系を流れる蒸気を遮断するための弁の一つ。原子炉格納容
  器内に設置されている。

*3 保安規定
   原子炉等規制法第37条第1項の規定に基づき、原子炉設置者が原子力発電所
  の安全運転を行ううえで遵守すべき基本的事項(運転管理・燃料管理・放射線
  管理・緊急時の処置など)を定めたもので、国の認可をうけている。

*4 運転上の制限
   保安規定では原子炉の運転に関し、多重の安全機能を確保するために必要な
  動作可能機器等の台数や原子炉の状態ごとに遵守すべき温度・圧力などの制限
  が定められており、これを運転上の制限という。保安規定に定められている機
  器等に不具合が生じ、一時的に運転上の制限を満足しない状態が発生した場合
  は、同制限からの逸脱を宣言し、予め定められた時間内に修理などの対応を行
  うことが求められている。

*5 要求される措置
   保安規定第41条では、原子炉隔離時冷却系が動作可能な状態でない場合、高
  圧炉心スプレイ系が動作可能であること、自動減圧系の窒素ガス供給圧力が正
  常であること、10日以内に正常な状態に復旧することが運転上の制限を満足し
  ない場合の措置として定められている。

*6 高圧炉心スプレイ系
   非常用炉心冷却系の1つで、原子炉水位が異常に低下した場合に、原子炉内
  に水を補給するための系統。

*7 自動減圧系
   非常用炉心冷却系の1つで、原子炉水位が異常に低下した場合に、原子炉の
  圧力を強制的に下げ、低圧の非常用炉心冷却系による原子炉への注水を促進す
  るための設備。

添付資料
・原子炉隔離時冷却系蒸気管内側隔離弁における不具合及び対策概要図(PDF 196KB)




	

	



			
			
		

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