人権尊重の取り組み
東京電力グループは、これまでの人権の取り組みをグローバル基準に昇華させ、国際社会を含む社会全体の人権保護・促進に貢献することを目的として、2021年8月に「東京電力グループ人権方針」を策定・公表しました。信頼され選ばれ続ける企業グループを目指し、事業活動の根幹として人権を尊重します。
1.「東京電力グループ人権方針」
東京電力グループは2021年8月、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、人権尊重の取り組みに対する姿勢を明確に示した「東京電力グループ人権方針」(以下、「人権方針」)を策定、公表しました。これまでの人権への取り組みの強化に加え、国際基準に沿った人権尊重の取り組みを進め、人権への負の影響の防止と軽減に努めます。
東京電力グループのみならず、サプライヤーを含むビジネスパートナーの事業活動や製品・サービスが、お客さまや地域コミュニティを含むステークホルダーの皆さまの人権に負の影響を生じさせた場合は、適切に対応します。
本方針は「国際人権章典」および国際労働機関(ILO)の「労働の基本原則および権利に関する宣言」、「子どもの権利とビジネス原則」をはじめとした人権に関する国際的な規範・原則に基づき、外部の専門家の意見も取り入れて策定しています。
具体的な人権課題へのコミットメント
東京電力グループは、人権に関する国際的な規範・原則に則り、以下の権利と尊厳を尊重します。
- (1)人身取引および強制労働、児童労働の禁止
- (2)結社の自由および団体交渉権等の尊重
- (3)多様性の尊重および機会均等
- (4)あらゆる形態の差別※やハラスメント、いじめ、不公平な扱いの禁止
- (5)適正な労働時間の管理と過剰な労働時間の削減
- (6)最低賃金の確保と生活賃金の支持
- (7)健康かつ安全な職場環境の確保
- (8)個人情報およびプライバシーの保護
- (9)消費者および地域コミュニティの安全確保と透明性のある情報開示
-
※
人種、皮膚の色、性、言語、宗教、国籍、年齢、性的指向・性自認・性表現、障がいの有無、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位またはこれに類するあらゆる事由による差別をいいます。
<関連規程等>
2. 人権尊重のガバナンス体制
人権方針の策定に伴い、これまで主に差別・同和問題等の解決・防止を目的としていた「人権啓発委員会」を改編し、2022年2月に「東京電力ホールディングス人権委員会」(以下、「HD人権委員会」)を設置しました。
HD人権委員会は、最高労務人事責任者を委員長(以下、「人権委員長」)とし、東京電力ホールディングスの関係部・室長および東京電力パワーグリッド、東京電力リニューアブルパワー、東京電力エナジーパートナー(以下、「基幹事業会社」)の人権担当役員を主体に構成されています。各基幹事業会社においても、個社ごとの人権委員会を設置しており、個社の人権委員会の委員長は上記HD人権委員会のメンバーを兼ねています。
HD人権委員会は、原則、年2回開催とし、前年度の取り組みのレビュー、当年度の計画の審議、人権デュー・ディリジェンスの行動計画のモニタリング等を行います。
また、人権に関する相談・通報窓口に寄せられた具体的事例の共有、是正策について議論、提言等をいたします。
HD人権委員会で検討・決定した事項は、必要に応じて、執行役会等に報告します。また、HD人権委員会で確認された具体的事例の解決策の検討や是正、再発防止策の実践にあたっては、企業倫理やリスク管理を所掌する社内委員会や各基幹事業会社と連携します。さらに、必要に応じて、弁護士等の社外専門家や労働組合などとも連携を図りながら対応を進めます。
直近のHD人権委員会の開催状況は以下の通りです。
開催日 | 議題 | 出席状況 |
---|---|---|
第1回人権委員会 2022年2月9日(水) |
|
24名/24名 (代理出席2名) |
第2回人権委員会 2022年6月13日(月) |
|
24名/24名 (代理出席3名) |
今までのHD人権委員会での議論に基づいた提言・是正策は以下の通りです。
- ガバナンス強化のため、人権に関する相談・通報システムを認知しやすくするとともに、広く周知する提言を担当部門に行いました。
- 視覚障がい者からの声を踏まえ、社内イントラネット上の組織長メッセージ等、特に多くの社員が閲覧する情報の発信方法について全組織に提言しました。
- 派遣スタッフからの相談・通報を踏まえ、派遣管理業務マニュアルの徹底の周知を行いました。
<参考>
3. 人権デュー・ディリジェンス
(以下、「人権DD」)
東京電力グループは事業活動のすべての局面において人権を尊重します。自らの事業活動によって影響を受ける人々をはじめ、あらゆるステークホルダーの人権が尊重されるよう、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権DDの仕組みを構築し、優先的に対応するステークホルダーとして「役員および従業員」「サプライヤー」としました。また、人権方針の適用範囲である連結子会社についても対応を開始しています。
人権デュー・ディリジェンス 人権尊重の仕組み
「役員および従業員」の人権影響調査について
「役員及び従業員」に関する人権DDの実施にあたり、当社事業における負の影響の特定(人権影響調査)を行いました。社外の専門家に意見をいただきながら社内ルールや社員への意識調査結果、過去の訴訟事案や人権に関する相談・通報内容等を分析、人権課題を抽出し、「人権侵害の規模」、「人権侵害が及ぼす範囲」、「人権の完全回復の不可能性」の観点から評価しました。
結果、「ハラスメント」、「労働時間」、「個人情報」の項目について特に負の影響が大きいと評価され、2022年度はこの3点の不適切事例の発生防止や発生した際の影響の最小化に重点的に取り組みます。
サプライヤー
サプライチェーンにおける人権尊重を強化するため、「調達基本方針」に人権尊重の要素を追加し、「サステナブル調達ガイドライン」を新規に策定しました。さらに「サステナブル調達ガイドライン」を適切に実施していることを宣言する「確認書」を提出いただくとともに、遵守状況確認のため「サステナブル調達アンケート」を実施する等、サプライヤーの人権尊重を徹底する仕組みを構築し、2022年度より対応を開始いたしました。
サプライヤーの人権尊重を徹底する仕組み
-サプライチェーンにおける人権尊重を強化するためPDCAサイクルを適用しています。-
<調達関連方針等>
連結子会社
- 東京電力グループ人権方針の適用範囲であると同時に、東京電力HDと基幹事業会社のサプライヤー・ビジネスパートナーである連結子会社44社を対象に、「人権尊重セルフアセスメント」(69項目-人権尊重の自社体制、サプライヤー、人権方針でコミットしている9つの人権課題)を実施しました(2021年12月)。
- 連結子会社の会社規模、設立年や事業特性によって特徴があり、個社毎の状況を確認の上、課題を把握し、対策を立案・実施する必要があることから、2022年度より優先順位をつけて個社ごとにインタビューを行います。
- また、連結子会社が自律的に人権尊重の取り組みが展開できるよう、親会社としての支援の検討も行います。
<参考>
4. 救済メカニズム
人権に関する問題に適切に対応するため、相談・通報窓口を社内外に設けています。相談・通報においては、相談・通報者の匿名性や、相談・通報内容の秘匿性の確保はもちろんのこと、相談・通報者に対する不利益な取り扱いや報復措置を禁止し、相談・通報者の保護を徹底します。
なお、東京電力グループの事業活動が人権への負の影響を引き起こした、またはそれに関与したことが明らかになった際は、適切な手続き・対話を通じて救済・是正に取り組みます。
人権に関わる主な相談・通報窓口
No. | 窓口名 | 設置 場所 |
相談形態 | 相談可能者 |
---|---|---|---|---|
1 | 社外 | 当社ウェブサイト上設置(投稿型) | あらゆるステークホルダー | |
2 | 人権に関する相談窓口 | 社内 | メール | 東京電力ホールディングス・基幹事業会社の役員および従業員 |
社外 | 電話(休日・時間外の対応有り) | |||
<参考> | ||||
3 | 企業倫理相談窓口 | 社内 | メール、社内イントラネット、電話、郵便 | 東京電力グループの仕事に関係するすべての者および関係したすべての者 |
社外 | メール、電話 | |||
4 | 労働時間に関する相談窓口 | 社内 | 電話、社内イントラネット | |
5 | 社内 | 当社ウェブサイト上設置(投稿型) | 資材調達に係わる取引先の皆さま |
相談・通報案件への対応体制
- 相談・通報案件への対応は、東京電力ホールディングス人権尊重推進担当(以下、HD人権尊重推進担当)が、各職場の人権尊重推進担当(企業倫理担当が兼務)と連携し、相談・通報者の人権に配慮しながら行います。
- HD人権尊重推進担当は、管理職経験のあるベテラン社員が務めます。
- 女性相談員(管理職)を配置しています。
- 2021年度に「人権に関する通報窓口」「人権に関する相談窓口」(上記表の1,2)で受け付けた件数は115件でした。
5. ステークホルダーエンゲージメント
東京電力グループの事業活動が及ぼす人権への影響について、影響を受けるステークホルダーの観点で理解・対応できるよう、労働者代表、サプライヤーを含むビジネスパートナー、地域コミュニティなどの皆さまとの対話に努めます。また、外部の専門家の意見も参考にします。
業界固有の人権課題として、協力会社、請負会社の「労働環境、安全」を認識しており、ヒアリングを通じて状況の理解・対応を深めていきます。
2022年1月 | サプライヤーである建設会社と意見交換し、課題認識を共有しました。 |
---|---|
2023年2月 | サステナブル調達アンケートの結果を参考に、複数の建設会社にヒアリングを実施予定です。 |
6. 情報開示
人権方針に基づく取り組みのプロセスや実効性の評価結果について、ウェブサイト(当ページ)等通じて、定期的に情報開示します。
統合報告書、コーポレート・ガバナンス報告書等にも取り組みを開示して参ります。
7. 人権方針の周知浸透/教育
本方針が社内に浸透するよう、すべての役員および従業員に適切な教育・研修を実施します。また、本方針が事業活動に適切に組み込まれるよう、関連する方針や手続き・業務に反映するとともに、人権DDが効果的に実施されるよう、その実施担当者の能力開発にも取り組みます。加えて、サプライヤーを含むビジネスパートナーの皆さまに対しても、本方針の内容の周知を徹底することで、サプライチェーン全体で人権尊重に努めます。
経営トップのコミットメント
- 人権週間の機会を捉え、社内イントラネットを通じて、東京電力ホールディングス代表執行役社長メッセージを発信しました。(2021年12月1日)
- 複数の子会社においても、併せて経営層からのメッセージを発信しました。(14社)
「人権啓発」から「人権尊重」へ
人権に関する取り組みが「教える・教わる」から、一人ひとりが主体的に「尊重する」という、一段上のステージを目指すために、これまで業務等で使用していた「人権啓発」を、「人権尊重」に名称を改めました。
研修について
- 人権方針策定に先立ち、社外講師を招き、役員を対象にした研修「今、なぜ人権尊重が必要なのか」を開催しました。(2021年5月)
- 人権方針の適用範囲である東京電力ホールディングス、基幹事業会社、連結子会社の全従業員(嘱託社員、パートタイマー、アルバイト、派遣スタッフを含む)を対象に「人権方針の理解を深めるためのeラーニング」を行いました。(2021年4Q)
その他の人権に関する研修実績(2021年度)
研修名 | 内容 | のべ受講人数 |
---|---|---|
2021年 新入社員研修 |
|
521人 |
eラーニング |
|
25,928人 |
各職場における研修 |
|
26,478人 |
人権尊重の感度向上のための工夫
社内イントラネット上に人権尊重のポータルサイトを開設(2022年7月)
- 相談・通報窓口にアクセスしやすくし、研修資料や人権尊重に関する情報を整理しました。
人権尊重のシンボルマークの策定、ピクトグラムの活用
- 人権尊重を視覚的に訴求するツールとして作成し、各種媒体で使用しています。
- 人権尊重について視覚的に緊張感を促すことにより、ハラスメントの防止、互いに人権を尊重する考え方・行動の醸成を目的にしています。
<人権尊重のシンボルマーク>
人権とは、全ての人が生まれながらにして、人間らしく尊厳を持って幸せに生きる権利です。
東京電力グループは、事業活動の根幹として人権を尊重します。
このシンボルマークは相手を想う心をハートにたとえ、あらゆるステークホルダーの人権を尊重する様子を表現しています。
<人権尊重のピクトグラム>
これらのピクトグラムは、事業のあらゆる局面で人権が尊重されるよう願いを込めて人権委員会事務局が作成しています。
東京電力グループでは、上記取り組みに加え、従前より取り組んできた差別・同和問題についても、人権方針に基づき適切に対応しています。
差別落書き発見の際の対応
東京電力グループは電力設備や社屋等に差別的な言葉を落書きされることがあります。人権侵害への加担にならないよう、発見した場合の具体的な対応について説明資料と報告シートを作成、東京電力グループ内に周知をし、発見時に適切で速やかな対応を心がけています。
公正な採用活動
東京電力グループでは、人権方針に基づき、就職の機会均等を確保するために応募者の基本的人権を尊重した公正な採用選考を実施します。
- 公正採用選考人権啓発推進員を選任し、所管するハローワークに届け出ています。
- 採用業務においては、新任業務担当者や面接担当者に対して事前に「公正採用選考に関する研修」を実施しています。
人権に関する通報窓口
当社のステークホルダーの皆様を対象にした、人権に関する通報窓口は、以下からアクセスしてください。
人権に関する通報窓口
東京電力ホールディングス(株)では、社員だけではなく、お客さま、地域コミュニティの皆さま、取引先、サプライチェーンで働く方々など、あらゆるステークホルダーを対象にした、人権に関する通報窓口を設けています。
通報があった場合は、担当部門が調査を実施し、救済策を検討、関連部署に是正を要請します。
なお、通報者のプライバシーを保護するとともに、報復行為を禁止し、不利益な取り扱いはないように努めます。
- 当社では公平性・公正性を保つため、社外に通報受付を委託しております。そのため、この先は受付専門の外部サイトに進みます。
- 情報セキュリティの観点から、まずは概要のみをご記載ください。詳細の確認にあたりましては担当部門より個別にメールにてご連絡を差し上げます。
- 通報内容は、投稿いただいた翌営業日(土日・祝日・年末年始の弊社休業日を除く)で拝読します。
内容によりましては、返信までに時間を頂く場合がございます。また、返信を差し上げられない場合もございますので、あらかじめご了承ください。 - 当社からの返信は通報いただいた方に個別にお送りするものです。返信内容の転載、二次利用はご遠慮ください。
- 当社に関連のない通報、または誹謗・中傷を目的とした通報はご遠慮ください。また、そのような通報への対応はいたしかねます。