~東京電力グループの電動車普及に向けた取り組み~

「カーボンニュートラル」と「防災」への社会的要請の高まり

世界では、気候変動対策を進めることが喫緊の課題であり、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、車両の電動化が期待されています。また、激甚化する自然災害に対し、電気自動車・PHEV等の電動車(以下「EV」)の「動く蓄電池」としての機能を活用することで、災害に強いまちづくりに貢献することも期待されています。

東京電力グループは、2021年7月に「安心で快適なくらしのため エネルギーの未来を切り拓く」という新しい経営理念を策定しました。実現に向けたビジョンでは、「カーボンニュートラル」と「防災」の二つが軸であり、EVがキーデバイスとなります。
東京電力グループは、従来よりEVや急速充電CHAdeMO規格の開発に携わるなど、EVの普及に積極的に取り組んできましたが、現在もEVを重点事業に位置づけ、グループ全体で取り組みを進めています。

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東京電力グループのEV推進体制

東京電力ホールディングス株式会社(東京電力HD)のEV推進室がEVの普及促進に取り組み、グループ会社の株式会社e-Mobility Powerが充電サービス事業を担い、EVの普及と充電インフラ整備を両輪で進めています。

e-Mobility Powerは、1枚の充電カードで同社のネットワークに接続されている日本全国の公共充電器が利用できる充電サービスを提供しています。「いつでも、どこでも、誰もがリーズナブルに充電できるサービスの提供と充電インフラの整備・拡充」を推進しており、2025年度までに、急速充電器を現状の2倍程度の15,000口に拡充予定です。

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「2020年度グッドデザイン賞受賞」新型EV用急速充電器(提供元:株式会社e-Mobility Power)

e-Mobility Powerの充電サービス事業の展開

「EV100」への参画

東京電力グループは、まず自らの業務車両をEV化する取り組みを進めています。 2019年5月に「EV100※1」に参画し、グループ保有の業務⾞両約3,600台を2025年度までに50%、2030年度までに100%電動化する目標を設定し、2021年度末時点で約18%、650台を電動化済みです。また、走行時のCO2排出量をゼロとするため、グループ会社の日本自然エネルギー株式会社より「グリーン電力証書」を購入し、充電に使用する電力に自然エネルギーにより発電された電気の環境価値を付加し、車両の走行分電力をカーボンフリー化しています。自らEVを導入する過程で見えてくる様々な課題の解決や、社内各所における取り組みの好事例やアイデアを集約するなど、社内で蓄積した知見をお客さまへの提案につなげていきます。

  • ※1 

    輸送手段の電化(Electro-mobility)を目的に掲げて、2017年9月に発足した国際企業イニシアチブ。EV推進企業が結集し、投資・政策を促進することを目指しており、社用車のEV化、充電器の設置などEV化を推進していることが参加の前提となる。

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東京電力グループのEV業務車両

日本自然エネルギー株式会社がグリーン電力の利用を証する「グリーン電力証書」

「電動車活用推進コンソーシアム」における取り組み

東京電力HDが事務局となる「電動車活用推進コンソーシアム」では、EV導入の意向がある企業と自動車メーカーが会員となり、業務車両に対するユーザーのニーズを集約して、自動車メーカーへ提言する形で、車格、航続距離、荷室スペースなど、車両のユースケースや運行オペレーションに合った仕様を共通化することで、EVを導入しやすい環境を作ることを目的に活動しています。また、EV導入にあたっての課題の共有、充電環境整備に向けた課題の解決などにも取り組んでいます。

この取り組みの一環として、「充電環境整備に関するガイドライン」を作成しました。EV導入時における、お困りごと解決の一助になればと考えており、とくに、車両調達や充電設備構築のご担当者様にご活用いただけけますので、下記よりぜひご覧ください。

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充電ソリューションの提供・グループの総合力を活かした複合型提案

企業がEVを導入する際、事業所構内への充電設備の整備が必要となりますが、受変電設備の新増設など、多大なコスト負担が発生するケースもあります。東京電力グループは、既存設備のエネルギー診断や、車両オペレーションなどを勘案した構内充電と公共充電の最適な組み合わせ、さらには再生可能エネルギーの活用によるEVのゼロエミッション化をご提案しています。エネルギー事業者として長年蓄積してきたノウハウとグループの総合力を活かし、「省エネ」、「電化(EV・充電)」、「再エネ」のパッケージ提案にて、顧客のカーボンニュートラル化を支援します。
2021年4月に、東京電力HDは日本郵政グループとカーボンニュートラル化の推進に向けた戦略的提携について合意しました。全国約2万4,000拠点の郵便局を運営する同グループとの提携により、地域のカーボンニュートラル化とレジリエンス強化を推進します。2021年10月に、栃木県の小山郵便局、静岡県の沼津郵便局にて実証実験を開始しました。集配用車両のEV化と充電設備の整備に加え、郵便局の電力の再生可能エネルギーへの切り替えや太陽光発電の活用、また効率的な電気の使用について支援します。

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静岡県沼津郵便局の実証実験イメージ図

法人向け急速充電器の共同利用サービス「グリーン・チャージ・シェアリング(仮称)」

昨今、企業・自治体においては、カーボンニュートラルの実現に向けて業務用車両をEVに切り替えていくことを検討されるケースが増えています。EVの充電は、敷地内駐車場に充電設備を設けることや、便利な場所にある公共の充電スタンドを利用することがまず考えられますが、EVシフトの流れがますます加速していく中で、「駐車場が機械式や賃貸のため、充電設備を設置することが難しく困っている」、「充電設備の投資が大きくなってしまうことがネック」といった課題も増えることが想定されます。
そこで、新たにEVを導入する企業・団体様向けの充電解決策として、東京電力HDは法人向け急速充電器の共同利用サービス「グリーン・チャージ・シェアリング(仮称)」をご提案しています。急速充電器の一定数の希望ユーザーが集まり適切な充電スペースが確保できる場合、普通充電器よりも短時間で充電できる急速充電器をその場所に設置し、特定の法人EVユーザー間で共同利用できる充電スタイルです。

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「グリーン・チャージ・シェアリング(仮称)」のサービスイメージ図

本サービスにより、EVユーザーの各法人は自社で充電設備を保有する必要がなく、予約システムから充電したい時間帯(枠)を選択しておくことで、業務オペレーションに影響しない希望するタイミングで充電することが可能となります。また、この急速充電器から提供する電力は再生可能エネルギー由来のグリーン電力の環境価値※2のついたカーボンフリーとなっているため、EVの走行中におけるCO2排出量をゼロにすることができます。

試験的サービスの第一弾としては、静岡県沼津市の沼津郵便局の敷地内に急速充電器を設置し、2021年11月1日から2022年1月末まで周辺地域の12社・1団体を対象に提供しました。本試験的サービスは、経済産業省「電動商用車を活用した物流MaaSの実現に向けた研究開発・実証事業」として実施し、サービスの利便性や事業性について検証しました。

  • ※2 

    グループ会社の日本自然エネルギー株式会社より、グリーン電力の利用を証する「グリーン電力証書」を購入。

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沼津郵便局(北側お客さま駐車場隣接地)の充電ステーション
日本郵便株式会社沼津郵便局のご協力により同局敷地内に設置

サービスの特徴

  • ① 充電は予約制

    本サービスの会員は占用充電枠を事前に確保して、業務に合わせて待ち時間なく確実に充電することができる。空いている時間帯はアプリで予約が可能。

    「グリーン・チャージ・シェアリング(仮称)」の予約アプリ画面

  • ② カーボンフリー充電

    グリーン電力証書の仕組みを活用し、再エネ由来100%の価値が付与された電力でEVを充電。設備投資や調達の手間を省いて、業務車両の走行におけるカーボンフリーの実現が可能。

  • ③ 充電料金は時間帯別料金

    充電枠の混雑具合や電力需給状況を加味し、電力市場価格が低廉な時間帯や利用者の少ない夜間・土日の料金を相対的に安く設定するダイナミック・プライシング(時間帯別料金)を導入している。時間帯別料金の導入により、充電時間をシフト可能なお客さまや、他社と業務スケジュールが大きく異なる(例:夜間配送)お客さまには、予約のしやすさに加えて、追加的な経済メリットが見込める。

「ダイナミック・プライシング」のイメージ図

試験的サービスでは、自治体をはじめ金融、保険、建設、設備販売・保守、エネルギー等の幅広い業種のお客さまにご参加いただき、「事務所の形態も様々なので、『急速充電器の共同利用』というEVの充電方法の選択肢が増えることで、EV導入検討をより進めやすくなる。」という反響をいただきました。今後、より良い形で沼津市での本格的なサービス提供ができるよう、試験的サービスの中で得られた改善点を見直していきます。また、潜在的ニーズが高い他の地域へのサービス展開にもつなげていく予定です。

多台数対応EV普通充電器

業務車両の電動化に取り組む中で、同一の敷地内で複数台のEVを充電する場合、電気設備や電気契約容量の大幅な増設を伴うケースが多く、コスト面への対応が課題となることがわかっています。

東京電力HDは、EV・プラグインハイブリッド車を複数台充電する際に使用電力を抑制する「多台数対応EV普通充電器(JW-EVSE-TPC01-0340)」の開発を行い、グループ会社を通じて2022年3月より販売を開始しました。

本製品は、複数台のEVを同時に充電する際に、各EVの充電電流を制御することで合計使用電力を抑制します。充電制御のための通信にローカル無線方式を採用することで、通信線の敷設や通信・サーバー利用料が発生しないほか、充電器自体に制御プログラムを組み込むことで外部制御装置を不要とし、工事費用の低減と、参考価格160,000円/台(税込)というお求めやすい価格設定を実現しました※3。また、軽量コンパクトな設計と、一般的なEV充電用コンセントと同じピッチ(83.5mm)の取り付け穴を採用することで、既存のEV充電用コンセントからの置き換えも容易にしています。

  • ※3 

    別途、送信機(参考価格:60,000円/台・税込)の設置が必要(1箇所につき1台)

当社は、投資・運用コストともに抑えることができる本製品を、事業所の構内や商業施設、集合住宅等の駐車場に多台数の充電器を設置される事業者さま・自治体さまにご提案します。

「多台数対応EV普通充電器(JW-EVSE-TPC01-0340)」の外観
※コネクタホルダーは、本製品に含まれません

タイムズ24株式会社さまの時間貸駐車場への導入

イナバクリエイト株式会社さまのEVガレージへの導入

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